今回は、心理的防衛機制のうち、「隔離」・「分離」についてお話しします。
自分の身に重大なことが起こっているにもかかわらず、何も感じない!
例えば、
長年思いを寄せていた相手に告白したけれど、玉砕。その直後から、世界が色褪せて見えてしまい、全てが意味ないように感じてしまう。
癌を告げられて、ショックで叫びそうになるかと思ったが、何も感じずに治療の準備を始めたが、何を食べても味を感じないし、人が話していることも遠いことのような感覚がある。
幼い頃から可愛がってくれた叔母が急死してしまって周りはとても悲しんでいるのに、自分だけ涙が出てこない。
家の鍵を閉めて何回も確認して出かけて、鍵がかかっている事はわかっているけれど、確認するために家に戻るのを繰り返して、遅刻してしまう。
ー 何に対しても心が動かない。世界に鮮やかさがない。感情がない気がする。思いやりがないからか。 冷たい人間なのかもしれない。人として何かが欠けているのか。ー と、悩むかもしれません。
これは、「隔離」あるいは「分離」といわれる、心理的防衛機制のひとつです。
受け入れ難い体験や記憶に対して、それに伴っている感覚や感情を切り離すことで、心の負担を軽くして、思考や行動をコントロールを保とうとします。
体験や記憶そのものを切り離して思い出せないようにするのではなく、現実で起こっていることは意識はできています。
頭ではわかっているけれども、感覚や感情だけが切り離されて、麻痺が起こって、無感覚・無感情に陥っている状態です。
そのため、とてもショックを受けているはずなのに、ちゃんと考えられたり行動できたりします。
あるいは、おかしな行為だと頭ではわかっていても止められないということが起こります。
不快に感じる状況で、あえて理性的に振る舞って、感情を出さずにいるのとは異なります。
体験そのものが意識から切り離される「解離」とは別のものですが、それに近い形態をとる防衛機制です。